2010年2月17日水曜日

「Fragments of Tokyo」を終えて


新宿PLACE Mで行った私の初めての写真展「Fragments of Tokyo」が終わった。
多数の方にご来場いただき、本当に、ありがとうございました。
ただここでは、写真展の経過報告などはあえてせずに、私がこの写真展で感じた一つのことを、考えてみたいと思う。

それは、ネットというプラットフォームの上で生まれる、新しい写真運動についてだ。

オーナーの瀬戸さんによると、今回かなりたくさんの方が来てくれたらしい。
それが、4人の知名度にしては「たくさん」なのか、それとも、日頃のPLACE Mの客数に比べて「たくさん」なのかは分からない。
たぶん、その両方だろう。

名前で客を引っ張る力を「知名度」とすれば、今回写真展をやった4人の一般的な知名度は、残念ながらゼロだ。
ではなぜ、瀬戸さんが言うように「かなりたくさん」の人が来てくれたのか。
答えは簡単。
私たち4人が、日頃Flickrというインターネットをベースに活動する写真家だからだ。

Flickrにはcontactという、ミクシィでいうマイミクのような機能がある。私たち4人のFlickrでの活動はだいたい3年くらいだが、4人のcontact数を合わせれば、それだけで3千人。もちろん、contact=友人ではありえないし、contactの中で東京在住の人も僅かだ。しかし、仮にこのcontactの1割が写真展に来てくれたとしても、それだけで300人である。
今回、一体何人の方が会場に足を運んでくれたかは分からない。
だが、私が会場にいた僅か3日間のあいだだけでも、100人以上の方に来て頂いたように思う。
記帳してもらうノートも全部埋まった。
繰り返すが、それは私たちの知名度のお陰ではなく、私たちが路上で必死にDMを配ったからでもなく、単純に、インターネットによる宣伝の効果なのだ。


私は、写真歴は10数年になるが、Flickrをやっていなければ、今ほど真剣に写真をやることはなかった。
その意味で、インターネットというプラットフォームから生まれた、新しいタイプの写真家なのだ。
それが邪道なのか、新しい正道なのか、今の私には言えない。
だが、以前なら、月例に投稿して掲載されたのをきっかけに写真家になるとか、写真館や写真家の所に弟子入りして写真家になるとか、広告業界で活躍してフリーの写真家になるとか、写真家になるには大抵いくつかのパターンがあった。
少なくとも私のように、写真共有サイトで写真に目覚め、写真共有サイトにアップすることを日々のモチベーションとし、それらに飽き足らなくなって本格の写真家を目指す(こうして書くと貧弱に聞こえるが)、という「写真道」が、これまでにない「新しい道」であることは確かだ。

写真展に来てくれたJim O'ConnellBrian Scott PetersonからMagnesiumの話を聞いた。
Jimによれば、これはエージェンシーのいないエージェンシー。つまり、写真家自身が直接顧客と取引するフォト・エージェンシーなのだそうだ。アイデアは素晴らしい。そういえば昔、VIVOという写真家によるセルフ・エージェンシーの試みが日本にもあった。メンバーは、川田喜久治、佐藤明、丹野章東松照明奈良原一高細江英公といった錚々たる顔ぶれ。彼らが、MAGNUM PHOTOSの日本版を目指して設立した組織、それがVIVOだ。残念ながらVIVOは、MAGNUMの日本版として定着するにはあまりにも早く解散してしまったが(ちなみに森山大道は、VIVOのスタッフになるため大阪から上京し、すでに解散していたため、細江英公の助手になった)、Magnesiumも、名前からも分かる通りMAGNUMを意識していることは確かだ。
そしてメンバーを見れば、大半がFlickrでお馴染みの写真家である。なかでも、このMagnesiumを実質的にマネージメントしているJimとBrianとAdrianは、Flickrから生まれたTokyo Beatsのメンバーだ。


私が言いたいことはこうだ。


Flickrを母体に生まれたMagnesium。この組織を構成する写真家を、従来的な意味での「写真家」と呼ぶべきかどうか、私には分からない。「プロ」と「アマチュア」の差を、「写真でメシを食っているかどうか」で判断するなら、Magnesiumの大半の写真家は、私と同じアマチュアであるだろう。

また、インターネットという仮想空間から始まる写真道が、邪道なのか新しい正道なのか、私には分からない。

ただ一つ確実に言えることがある。

それはネットを通じて知り合った私たち4人が、今回写真展をやって、新しい写真家の第一歩を踏み出したこと。
そして同じくネットを通じて知り合った仲間が、写真家によるセルフ・エージェンシーという勇気ある第一歩を踏み出したことだ。
ここから分かることは、正道か邪道かに関わらず、ネットというプラットフォームから、確実に今新しい写真運動が誕生しつつある、ということだ。


「人は自分がどこへ行っているか知らない時ほど高く上ることは決してない」スタンダール『ナポレオン』


私たちがやっていることは、私たちが思う以上に「新しい」こと、なのかも知れない。

今回写真展をやったメンバー。左から渡部敏哉、私、Jon EllisThomas Ornad
photo by Sean Wood

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